第14回 DIHAC 研究会 報告 14th DIHAC cross-cultural exchange meeting analysis report (Japanese)

2023.02.02

14回 DIHAC 研究会 報告

14th Digitally Inclusive, Healthy Ageing Communities (DIHAC) Study Cross-cultural Exchange Meeting report (Japanese)

Report in English 

後藤夕輝, 須田 拓実,ミョーニエン アング,小柳祐華


・健康な高齢化を推進する政策において エイジング・イン・プレイス(Aging in Place:歳をとって身体的
に衰えても、住み慣れた場所・環境や住まいで、自分らしく暮らすという意味)がますます支持されていま
す。地域住民の社会的フレイルを防止することが重要です。
・ファンクショナルトレーニングとは、運動に加えて人間工学に基好き正しい姿勢を維持する機能を向上さ
せる事により痛みや可動域の改善を図り、健康的なライフスタイルを実現するトレーニングのことです。


2022年12月14日に第14回DIHAC研究会が開催されました。DIHAC研究会では、2020年より隔月ごとに国際的な研究者を招待し「DIHACポリシーレビューミーティング」を開催しています。各国で進行中の「健康な高齢化対策プロジェクト」からの経験や知見を共有し、研究者同士が意見交換できる場を設けています。

Program

Socializing 

ミョーニエン アング、MD, MSc, PhD

順天堂大学大学院医学研究科グローバルヘルスリサーチ講座准教授、健康総合科学先端研究機構准教授、国際教養学部准教授。DIHAC研究研究代表者。 

 Guest speaker

Presentation 1: The Netherlands

Dr. Steven Bunt PhD  Senior lecturer, researcher and project leader at Hanze University of Applied Sciences, Groningen, the Netherlands.

Title: Social Frailty in Older Adults

Presentation 2: Singapore

Mr. Nelson Chong , R4 Coach, CEO & Founder of Functional Training Institute, Singapore

Title: The Functional Way to Anti-ageing and Pain-free Living  

写真1 第14回DIHA研究会参加者スクリーンショット

Presentation 1

オランダのHanze UniversityからDr. Steven Buntより「高齢者の社会的フレイル」に関する発表があり、下記の4つのトピックが論じられました。

①多面的観点からみた社会的フレイル

フレイルには身体的、精神的、社会的な要素があり、理学療法を受ける高齢者(70歳~)の60%にフレイルを認めた、と報告されています。

②社会的フレイルという概念

社会的フレイルは、様々な一般的・社会的資源(または制限)、社会的行動・活動、自己管理能力などを含む多次元的な概念として理解することができ、これらはすべて社会的ニーズの充足に影響します。

社会的フレイルは、生涯を通じて1つ以上の基本的な社会的ニーズを満たすために重要な社会的・一般的資源、活動、能力を失う危険性がある、あるいは失ったことのある一連の状態として定義することができます。

加齢に伴って人々を取り巻く資源が変わったり、資源を失ったりする中(例えば、就労を通じて得られる資源が退職により得られなくなる等)、代替的な手段をもって社会的ニーズを満たすという視点もあり得ます。

③高齢者自身の経験談

「農村部在住高齢者と生活支援高齢者の社会的フレイル体験:質的研究(Bunt et al. 2021)」は、地域在住高齢者と生活支援が必要な高齢者の社会的フレイルの経験についてより深い洞察を得ること、これらの2グループ間の差異を探ることを目的に行われました。オランダの農村に住む地域在住高齢者と生活支援を受ける高齢者38名を対象に(1)社会的ニーズを満たすための現在のリソースと活動、(2)失われたリソースと活動、(3)リソースと活動の時間的変化にどのように対処し適応しているか、を聞き取り分析されました。孤独感は地域居住者のみで報告され、移動と社会活動への参加の喪失は生活支援者が強く経験していました。これらの知見は「定住型高齢化」という広く普及している政策や実践に疑問を投げかけるものでした。高齢者によっては住み慣れた場所で老いることよりも、支援された環境で暮らす方が社会的フレイルを防ぐことができるかもしれません。

④社会的フレイルは測定できるか?

社会的フレイルの評価指標として下記3つが紹介されました。

social vulnerability index(Andrew et al.2011)

Cross-culturally adapted to Dutch(Brunt et al. 2017)

Items analysis of the Frailty Index (FI-35) (Zhang et al. 2021)

Presentation 2

シンガポールのFunctional Training InstituteからNelson Chong氏より「アンチエイジングと痛みのない生活を実現する機能的な方法」の発表がありました。Nelson氏はリハビリテーションと機能的トレーニングの教育者であり、アジアを中心に世界各国で子供から高齢者まですべての人が痛みのない生き生きとした生活を送ることができるよう貢献されてきました。

まず、痛みが生活の質に及ぼす影響を示した上で「エクササイズが薬である」ことを強調されました。アンチエイジングと痛みのない生活のための3つの秘訣として、上肢(頸部・肩痛)、脊椎(背部痛)、下肢(膝痛)が紹介されました。膝痛・背部痛は疼痛部位をみるのではなく、足・踵・臀部のバランスをチェックすること、また痛みの原因がどこにあるのか(運動・生活習慣、外傷歴、人間工学)を知ることが重要です。頸部・肩痛は胸椎・肩甲骨をチェックします。パソコン作業やスマートフォンの操作、自転車を運転する際の体位など仕事や生活習慣の影響を受けていることが多いです。足、睡眠、仕事を正して身体のアラインメントを再調整することが、痛みの緩和につながります。

写真2 シンガポールで行われているファンクショナルトレーニング指導の様子

 Report

後藤夕輝 MD, 東京歯科医科大学 内科学講座 助教

・須田 拓実 MSc, 順天堂大学大学院医学研究科グローバルヘルスリサーチ講座博士2年生

・小柳祐華 PhD, 東京有明医療大学保健医療学部講師,順天堂大学大学院医学研究科グローバルヘルスリサーチ講座非常勤助教

ミョーニエン アング MD,MSc,PhD 順天堂大学大学院医学研究科グローバルヘルスリサーチ講座准教授、健康総合科学先端研究機構准教授、国際教養学部准教授。