第10回 DIHAC 研究会 報告 10th DIHAC policy review meeting analysis report (Japanese)

2022.05.13

第10回 DIHAC policy review meeting報告

後藤夕輝, 有路 春香,小柳祐華, ミョーニエン アング

Report in English 


DIHAC研究会では、2020年より隔月ごとに国際的な研究者を招待し「DIHACポリシーレビューミーティング」を開催しています。各国で進行中の「健康な高齢化対策プロジェクト」からの経験や知見を共有し、研究者同士が意見交換できる場を設けています。第10回DIHACポリシーレビューミーティングが2022年4月19日に開催されました。  本会の冒頭では研究代表者のMyoNyeinAung より開催に際して本研究会の目的について共有がされました。参加者は12カ国(日本、韓国、シンガポール、タイ、ケニア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、ネパール、南アフリカ、英国)の医師、社会学者、公衆衛生学者など様々なバックグラウンドを持つ研究者であり、各発表後には活発な意見交換が行われました。

本会議ではSathirakorn Pongpanich教授(タイ、バンコク、チュラロンコン大学公衆衛生科学部)が議長を務めました。プレゼンテーションは(1)Malcolm Field教授より高齢者におけるスマートウォッチの利用、(2)湯浅 資之教授よりAIを利用した持続可能な高齢者ケアモデル構想、(3)Mohd Rohaizat Hassan准教授(マレーシア国立大学)より医療従事者におけるCOVID-19パンデミックに対する包括的シュミレーションとフィールドトレーニングについて3名の研究者より報告されました。 3つのプレゼンテーションの概要は以下の通りです。

【プレゼンテーション1】

演題:高齢者のApple watch利用に関する事例評価
演者:Malcolm Field教授(杏林大学、早稲田大学)
概要:高齢者がスマートウォッチを利用する際の利点としては、リマインダー、触覚フィードバック、音声・Siriによるディクテーション、GPS、運動や心拍の追跡機能などがあります。しかし、一方で欠点としては導入コスト、操作に慣れが必要であること、アプリやボタンの小ささ、運動や健康データの精度が十分ではないことが挙げられます。これらを理解した上で高齢者支援に上手く活かしていく為に非利用者に対するサポート体制を整え、高齢者がデジタルテクノロジーを生活の中で活用させていくことについて報告されました。
【プレゼンテーション2】
演題:健康高齢化社会「陽伊豆る国構想」-地域に根ざした統合医療システムとAIを活用した健康増進プログラムの開発
演者:湯浅 資之教授(順天堂大学)
概要:日本では高齢化が進んでおり、持続可能な高齢者ケアモデルが望まれています。静岡県伊豆の国市をフィールドに保健医療・介護福祉分野の課題を解決する具体的事業を構想し、4つの具体的な事業(①デジタル活用による次世代型ヘルスプロモーションシステムの構築、②在宅医療システムの確立、③地域交流とデイトレーニングセンター設置、④海外からの介護人材受け入れと帰国後日本式介護技術普及)の達成を目指しています。さらに、このモデルで得た経験や研究を蓄積し、将来高齢化社会を迎える開発途上国へ展開する計画が進行中である旨報告がされました。本研究ではICTの活用とAIの推進による健康な高齢化に根差した町作りについて、高齢化が急速に進行するアジア諸国の研究者と活発な討議が行われました。
【プレゼンテーション3】
演題:医療従事者におけるCOVID-19パンデミックに対しての包括的拡張現実シュミレーションとフィールドトレーニング
演者:Mohd Rohaizat Hassan准教授(マレーシア国立大学)
概要:AR(拡張現実)やVR(仮想現実)シュミレーション技術を利用してCOVID-19へ対しての包括的なトレーニングツールを開発し、COVID-19の管理活動に携わる人々を対象に、開発モジュールを用いたトレーニングを実施している旨報告されました。
今回の会議ではアジア各国で行われている高齢者や医療従事者の生活へのデジタルツールの活用、デジタル技術の介入による持続的な高齢化地域ケアモデルに関して事例を通して学びました。今後もデジタルインクルーシブな高齢化社会作りのために、最適なデジタルデバイスや技術の追求を継続していく予定です。

 

後藤夕輝 MD, Assistant Professor, Department of Internal Medicine, Tokyo Dental and Medical University, Japan
有路 春香 MD, doctoral student at Department of Global Health Research, Graduate School of Medicine, Juntendo University,  Physician, Kudaka Clinic, Okinawa
小柳祐華 PhD, Lecturer, Tokyo Ariake University of Medical and Health Science.Visiting Assistant Professor, Juntendo University, Department of Global Health Research
ミョーニエン アング  MD,MSc,PhD Associate Professor, Department of Global Health Research, Graduate School of Medicine, Advanced Research Institute for Health Sciences and Faculty of International Liberal Arts, Juntendo University, Tokyo, Japan.